国土の砂漠化は、オルハン神権帝国を蝕んで久しい。
去年も、村が砂漠に飲まれた。
今年も、また、飲まれるだろう。
例えるならば、砂上の楼閣のごとし。
残された命脈は砂時計の砂のようなものだ。
ゆっくりと、文明が崩れていく。
なれども、帝国は揺らがない。
異常が常態化してしまった、と嗤うべきだろうか。
異常に直面してなお、踏みとどまったと讃えるべきだろうか。完備された官僚制。揺るぐことのない常備軍。
緻密な社会制度。
帝国は、持ちこたえてきた。
されど、と訳知り顔で識者は呟くものだ。
永遠など、どこにもありはしない、と。
なるほど、国家とて永遠ではないのかもしれない。
時の試練とは、残酷だ。
諸行無常の響きは、盛者必衰の理を表すのだろう。
で。
だから。
それがどうしたというのだ?
よろしい、滅びが必然であるとしよう。
だからといって、どうして滅びを甘受しえるのだ?
滅びるとしても、それが、今日であるべき道理もなし。
エゴと嗤え。
傲慢と詰れ。
驕慢と罵れ。
しかして、国はそこにあるのだ。
故に、叫ぶ。
汝、トリル・オルハンは叫ぶのだ。
諸国人よ、オルハンは滅びないのだ、と。
それは、決意であり義務の遂行だ。
祖先と子孫が住まうべき大地を守り抜く、という誓い。
銃と魔法の轟の先に、打ち立てられるべき新秩序が
迫りつつある……